帰ってきた蜂須賀敬明のしゅみラークル

趣味にまつわるあれこれを、おつたえします。

巌窟王の話

アレクサンドル・デュマ・ペールの大河小説『モンテ・クリスト伯』を原作にした、

アニメ『巌窟王』は、オトナのための世界名作劇場とでもいうべき、

スタイリッシュかつ情熱的な作品に仕上がっています。

 

主人公のエドモン・ダンテスは、

謀略によって恋人も地位も全て失って監獄に閉じ込められます。

数年の時を経て脱獄して富を築き伯爵となり、復讐を果たしていく、

非常にスリリングな物語になっています。

 

原作は岩波文庫で全7巻という大変なボリュームになっていますが、

非常にテンポよく物語が進んでいくので、長さを感じません。

『レ・ミゼラブル』は少し中だるみする印象なのですが、

『モンテ・クリスト伯』は、飽きさせないギミックに富んでおり、

19世紀の古典と侮るなかれ、現代でも楽しめる作品になっています。

 

さて、この『巌窟王』は2004年にアニメ化されたのですが、

宇宙船が登場する設定だったり、ロボットが出てきたりと、

舞台が19世紀のフランスから近未来に変わっており、

そのアレンジが上手に作用し、古典の重さを上手に軽減しています。

作品の色使いがクリムトの絵画風なのもポップで非常にかっこいい。

 

何よりも注目したいのが、

アルベール役の福山潤さんと伯爵役の中田譲治さんの演技でしょう。

『巌窟王』の伯爵はドラキュラ風のミステリアスな雰囲気を持ち、

底の見えない謎の男として描かれるのですが、

この艶っぽい演技に思わずぞくぞくしてしまいます。

 

海千山千の伯爵に対して、

純真無垢な若い貴族のアルベールは、

伯爵の正体など知らないまま、その魅力に惹かれていくわけですが、

右も左も分からない純朴な少年が、

伯爵の真実へと徐々に近づいていき、

やがて一人の紳士となっていくその変化を、

福山潤さんはとても丁寧かつ寄り添うように演じられており、

アルベールという青年の確かな成長を感じることができます。

 

原作は伯爵視点で話が進んでいき、アルベールはそれほど重要な役ではないのですが、

アルベール視点から伯爵の謎を追い、成長物語のような構造に作り変えた、

脚本は英断だったのではないだろうかと思われます。

 

最近は海外古典をアニメ化することがなくなってしまい、

少しさみしい気がしますが、

あえて『グレート・ギャツビー』とか『カラマーゾフの兄弟』とか、

その辺りをポップにアニメ化してみるのも面白いのではないかと、

勝手に妄想してしまいます。

 

それにしても、『巌窟王』の次回予告はかっこいい。

待て、しかして希望せよ。

これは原作を読んだ人にも嬉しい、粋な演出です。