蜂須賀敬明のしゅみラークル

趣味にまつわるあれこれを、おつたえします。

熱海温泉の話

熱海というと、みなさんどんな印象をお持ちでしょうか?

 

僕より上の世代の方なんかだと、

熱海は社員旅行や団体の旅行客で溢れかえり、

ちょっとセクシーなお店で楽しんだ、なんて人もいらっしゃるかもしれません。

 

あるいは、僕より若い旅好きの人なんかは、

一時期寂れた時期もあったみたいだけど、

最近は結構おしゃれな店も多くて、選択肢の1つに入るんじゃない?

と、割とポジティブな印象を持たれているかもしれません。

 

はてさて僕はどちらかというと、

上の世代が見てきた、いわゆるイケイケの熱海はよく知らず、

かといって、今の再開発された熱海には泊まったことがなく、

ちょうど、バブルがはじけて以降、下降線をたどり、

全力で廃れまくっていた2007年頃に泊まったので、

なんとも微妙な印象を受けることになりました。

 

つわものどものが夢の跡、ではありませんが、

僕が熱海に初めて宿泊した頃は、旅館の老朽化や閉館が相次ぎ、

旅行客を周辺の箱根や伊豆に奪われまくり、

今後、熱海がどのように変わっていくかを模索している最中でした。

 

80年代のゲームセンターが潰れていたり、

閉じたスナックや風俗店の案内があったり、

空き店舗と書かれた不動産屋の案内があったり、

当時大学生だった僕は、おいおい、

すげえとこに来ちゃったなと思ったのですが、

よくよく考えてみるとひなびた温泉宿というのも、

旅の醍醐味ではないかという気がします。

 

泊まった旅館の女将さんは、

それこそ志村けんが真似をしそうなよぼよぼのおばあさんだったのですが、

女将さんから、賑わっていた頃の熱海の話を聞いたり、

これからどうするのかねえ、という愚痴を聞かされたりするのも、

よそでは味わえない旅情と言えるでしょう。

 

熱海は間違いなくどん底を経験してはいましたが、

最近では再開発に成功し、観光客も戻ってきているそうです。

はたして、賑わっている姿が幻想なのか、落ちぶれた姿が幻想なのか、

よくわからなくなる、独特の魔力が熱海には存在しているように思えます。

 

そのおばあさんが今も女将さんを続けてらっしゃるかはわかりませんが、

熱海というと、僕はその女将さんが震える手でおしぼりを出してくれたことを、

思い出します。

 

リッチでラグジュアリーな旅ももちろん楽しいですが、

温泉宿の歴史を感じさせる建物や、人と出会うこともまた、

人を旅に狂わせる1つの要因と言えるでしょう。

 

都心から最も近いリゾート地戦争は過酷を極めます。

箱根、伊豆、熱海、北に向かえば秩父や草津、伊香保など、

ライバルがひしめき合っている現状ですが、

辛酸を舐めた経験のある熱海の復活は、

温泉戦国時代に、新たな風を巻き起こしていくかもしれません。