蜂須賀敬明のしゅみラークル

趣味にまつわるあれこれを、おつたえします。

the brilliant greenの話

90年代の邦楽はロックバンドブームであり、

たくさんのバンドがにょきにょきと現れていました。

 

その中でもブリグリは、夜と朝の間のような色彩の、

異彩を放ったバンドでした。

川瀬智子さんの、少しダウナーだけどキュートでミステリアスな雰囲気のある、

女性ヴォーカルは小学生だった僕をメロメロにしていました。

 

のちに川瀬さんはTommy February6という、

スウィート方面にぶっちぎったプロジェクトを始めて、

そちらも大変キュートでしたが、

ブリグリの、騒ぎすぎず、でも絶望はしていない、

なんとも言えないせつなさは、他に類例がない気がします。

 

当時の僕はせっせと横浜の塾に通っていたのですが、

ほとんど勉強はせず、違う学校の友達と話すことだけに夢中になっていました。

塾には小学校とは違う、少しませた女の子もいて、

その子が好きなバンドが、ブリグリでした。

 

周りはゲームや勉強に熱中しているのに、

僕とその女の子は勉強中にこっそりFMヨコハマを聞いて、

音楽の話をするのは、なんだか少し大人びたことをしている気がして、

意味もなくわくわくしたものです。

 

音楽は、記憶を閉じ込めた箱の鍵だと僕は思っています。

僕らは毎日いろんな記憶をどんどん詰め込んで、

その大半をどんどん忘れていくわけですが、

時にこれは覚えておこうと、特別な箱に思い出をしまったはいいものの、

しまったことすら忘れてしまうものです。

 

ですが、音楽を聴くと、一瞬で鍵が開いて、

ブリグリの話をした時、かなりお腹が減っていて、

女の子がしていた眼鏡の形とか、塾の黒板の形とか、

そういうものが、さっきのことのように蘇るのですから、

実に不思議なものです。

 

何が、どんな形で鍵になるかはわかりません。

いろんな音楽を聴くと、鍵が増えていく気がするので、

新しい音楽を探すのは、やめられませんよね。